レーザー点火向け
808 nm帯高出力VCSELファイバー結合型
モジュールの開発
808nm Range High-power Fiber-coupled VCSEL Module for Laser Ignition
泉谷
一磨
*大倉
佑介
*沼田
雅之
*新井
伸幸
**池田
圭介
**Kazuma IZUMIYA Yusuke OHKURA Masayuki NUMATA Nobuyuki ARAI Keisuke IKEDA
佐々木 譲
*萩田 健太郎
*軸谷 直人
*鈴土 剛
***Yuzuru SASAKI Kentaro HAGITA Naoto JIKUTANI Tsuyoshi SUZUDO
要 旨 _________________________________________________ レーザー点火における励起光源用として,808 nm帯の高出力VCSELモジュールの開発を 行った.高効率活性層の開発,放熱性を高める接合技術の開発,ファイバーカップリングを 考慮した設計と光学部材実装技術への取り組みにより,従来よりも高出力化を実現した.製 作したモジュールは非常にコンパクトかつアレイ出力311 W,ファイバーアウト出力204 W という高出力を実現し,これまでに報告されたファイバー結合型VCSELモジュールの中で 最大となる出力を確認した.また,このVCSELモジュールを用いてYAGレーザーを励起し 受動Qスイッチ動作をさせて,レーザー点火の実用上必要な出力とされる2.5 mJ × 4パルスの 出力を得た. ABSTRACT _________________________________________________
We developed an 808nm range fiber-coupled high-power VCSEL module as a pump source for laser ignition. In this module, array output of 311W and fiber output of 204W were obtained (coupling efficiency was 65%). We realized this module by improvement of external quantum efficiency, reduction of thermal resistance, and optimization of fiber-coupled design. The module has the highest power as fiber-coupled VCSEL module as far as we know. By using this VCSEL module, a passively Q-switched laser output with 2.5mJ × 4 pulses was achieved. This pulse energy is enough to operate an engine stably.
* リコー未来技術研究所 光エレクトロニクス研究センター
Opto-electronics R&D Center, Ricoh Institute of Future Technology
** 画像エンジン開発本部 ICT開発センター
Imaging Core Technology Center, Imaging Engine Development Division
*** リコーインダストリアルソリューションズ株式会社 オプトデバイスセンター RICOH Industrial Solutions Inc., Opto Device Center
1.
背景と目的
1-1 背景 近年,低消費エネルギー,低環境負荷社会への関 心はますます高いものとなってきている.クリーン なエネルギー源である天然ガスを燃料としたガスエ ンジンと,これを用いたコージェネレーションシス テムは今後急速な普及が進むことが見込まれており, 更なる高効率化が強く求められている. 内燃機関であるガスエンジンの高効率な動作を実 現するための新点火手法として,レーザーによる点 火技術の有用性は1970年代から指摘されており1), 近年のマイクロチップレーザーに代表される高輝度 短パルスレーザー光源の小型化2)と相まって,ここ 数年間非常に注目を浴びる技術となっている. レーザー点火の実用化にあたり,最も有力視され て い る の が 固 体 レ ー ザ ー 結 晶 で あ る Nd:YAG/Cr:YAG (YAG:Yitrium Alminium Garnet) を 受動Qスイッチ動作させることによって発生させた 高輝度短パルスレーザーを点火源として用いる構成 である3).この構成では,固体レーザー結晶である YAGを励起するための励起光源が必要となり,ま たこの励起光源こそが高輝度短パルスのエネルギー を決定するキーデバイスとなる. 本稿では,この励起光源として我々が開発した 808 nm帯の高出力VCSEL(Vertical Cavity Surface Emitting Laser: 垂直共振器型面発光レーザー)モ ジュールについて報告する. 1-2 VCSELとは VCSELは,1977年に東京工業大学の伊賀健一教 授によって提案された日本発のレーザーデバイスで ある.従来の端面発光型半導体レーザーが基板面に 水平方向にレーザービームを出射するのに対し, VCSELは基板面に垂直方向にレーザービームを出 射する. VCSELは書き込み光源として好適なデバイスと され,我々はFig. 1に示すレーザープリンタ用の 40chVCSELアレイを開発し,製品化に成功してい る4).Fig. 1 40ch VCSEL array for laser printer of RICOH.
1-3 レーザー点火におけるVCSELの優位性 VCSELは,端面型レーザーには無い新しい特長 を備えており,主に以下に挙げる3つの理由から, レーザー点火における励起源として非常に期待され ている. 1つ目は,温度に対する波長の安定性が非常に高 いことである.YAG結晶はFig. 2に示されるように 吸収係数の波長依存性が大きく,励起光源の波長範 囲は803~810 nm程度に限定される.このため,励 起光源の波長が安定していることは非常に重要であ る.VCSELの共振器は,共振器長が波長オーダー と同程度の長さのため,単一縦モード動作が可能で あり,温度が変化しても縦モード間のモードホップ が無い.これに対し,端面型レーザーは一般的に共 振器長が長いため複数の縦モードが存在し,その モード間隔も狭い.このため,温度変化による隣接 したモードへのモードホップが生じ,波長が大きく 変動する現象が起こりやすい.以上のような共振器 構造の違いから,VCSELの温度に対する波長変化 は端面型レーザーに対して1/10程度と非常に小さ い5).
Fig. 2 Absorption coefficient of YAG. 2つ目の理由は,高出力動作に対する高い信頼性 である.端面レーザーでは共振器端面において光強 度 の 高 い 活 性 領 域 が 晒 さ れ て い る の に 対 し , VCSELでは電流の注入される活性領域が素子中央 部に限定されており,露出していない.このため, 端面損傷による故障モードが存在せず,高出力化し ても高い信頼性を保つことができる. 3つ目の理由は,モノリシックな2次元アレイを容 易に実現できることである.これにより,後述する MLA (Micro Lens Array) 集光光学系を用いることで 端 面レー ザー と比較 して 非常に 小型 で安価 なモ ジュール化を実現することが可能となる. 1-4 レーザー点火の概要 Fig. 3は,従来の点火方式である火花点火(a)と, レーザー点火(b)の概念図を示したものである.電 極間に高電圧を掛けることで放電による火花を生じ させる火花点火に対し,レーザー点火では高ピーク パワーのレーザー光を集光することで混合気中に存 在する分子を電離させ,ブレイクダウンと呼ばれる プラズマ状態を発生させる.火花点火と異なり,非 接触で,空間に着火点を発生させることができるこ とから,電極による熱損失が無い,空間での点火位 置の自由度が高い等,燃焼工学上のメリットが得ら れ,燃費向上が期待できると言われている3).また, 火花点火における電極のような磨耗部品が無いため 長寿命であることも大きな特長である.
Fig. 3 Schematics of each ignition method; (a) Spark ignition, (b) Laser ignition.
VCSELを用いたレーザー点火プラグシステムの 構成としては2 種類の方式が提案されており6,7), Fig. 4はそれぞれの方式を図示したものである.Fig. 4 (a)で示されている直接励起方式では,VCSELアレ イから出射されたレーザー光のエネルギーを有効に 活用しやすいという利点があるが,半導体デバイス であるVCSELがエンジンの近傍に配置されるため, エンジンから生じる熱や振動に晒されてしまう.一 方,Fig.4 (b)で示したファイバー伝送方式では, VCSELをエンジンから遠方に配置できるため,熱 や振動の影響から分離することが可能である.従っ て,ファイバー伝送方式はデバイスの信頼性の点で 優位性を持っている.このことから我々は,レー ザー点火の実用化を考えた際にはファイバー伝送方 式が望ましいと考え,この方式を採用した.
Fig. 4 Schematics of each pumping method; (a) Direct pumping, (b) With fiber.
(a) Spark ignition (b) Laser ignition Piston Combustion chamber Intake valve exhaust valve Electrode Window Intake valve exhaust valve Piston Combustion chamber
1-5 目的 以上のように,レーザー点火プラグの実用化のた めには,励起光源にVCSELを用い,ファイバー伝 送方式を採用することが望ましい.そのためには, VCSELアレイから出射された高出力のレーザー光 をファイバーを通じて取り出すことのできる,ファ イバー結合型VCSELモジュールが求められる. 一方,固体レーザーの出力目標として,500 μsの 時間内に2.5 mJ × 4パルスのレーザーエネルギーが 得られれば,安定なエンジンの運転が可能であるこ とがガソリンエンジンを用いた点火実験で報告され て い る8). し か し , フ ァ イ バ ー 結 合 型VCSEL モ ジュールにおいてこれまで報告されている最大の出 力は約110 Wであり9),その励起出力では2.5 mJ × 4 パルスのレーザーエネルギーを出力するには不十分 であった. 本研究の目的は,レーザー点火プラグの実用化に 向けて,2.5 mJ × 4パルスのQスイッチ出力を達成で きるVCSELモジュールを実現することである.
2.
高出力化のための取り組み
レーザー点火用の光源としてVCSELモジュール に 求 め ら れ る 出 力 は ,Duty が 1 % 程 度 の QCW (Quasi Continues Wave: 擬似連続発振)において ファイバーアウトで200 W程度であり,我々がプリ ンタ用として開発したVCSEL(1chあたり数mW) と比較して格段に高出力化を行う必要がある. このため,我々はVCSELモジュールの高出力化 に向けた様々な検討を行った.この章では,我々が 行った取り組みの中から,重要課題と位置付けた項 目について説明する. 2-1 外部量子効率の改善 Fig. 5はVCSEL単素子の断面構造を示したもので ある.屈折率の異なる半導体材料を組み合わせた p型とn型のDBR(Distributed Bragg Reflector: 分布型 ブラッグ反射鏡)によって,発光層である量子井戸 活性層を上下方向に挟んだ構造をしている.各電極 間にバイアスを与え,ホールと電子を活性層に注入 することで,活性層で再結合によって発生した光が 基板に垂直方向に共振しレーザー発振を生じさせる. この活性層が,半導体レーザーのしきい値や出力特 性を決める非常に重要な領域となっている.我々は 外部量子効率の向上のために,これまで書き込み VCSELの活性層材料として開発してきたGaInPAsよ りも更に高利得である新規材料を開発した.更に, 組成や歪量,成長温度をパラメータとして出力特性 を比較し,条件の適正化を図った. Fig. 6に,改善前後の活性層におけるPL (Photo Luminescence) の評価結果を示す.PLとは,活性層 に光を照射し,光励起による発光スペクトルを観測 する結晶の評価手法であり,活性層単体の効率を評 価することができる.Fig. 6において改善後の活性 層を比較すると,PLスペクトルのピーク強度が向 上すると共に半値幅も狭くなっており,活性層の高 利得化,高品質化を実現できていることが分かる. 改善前後でピーク波長も異なっているが,これは組 成の微調整により簡単に合わせ込みが可能であり, 強度への影響は無いと考えられる.Fig. 5 Cross section of single channel VCSEL.
Active layer n‐electrode p‐electrode Laser output p‐DBR n‐DBR OA (Oxide Aperture) Substrate Spacer Insulated layer
Fig. 6 PL spectra of each active layers. 活性層の改善に伴い,共振器構造も活性層の特性 に対して最適化することで更なる高効率化を期待す ることができる. VCSELは多層膜反射鏡であるDBRを採用してお り,Fig. 7のように,DBRのペア数等を変更するこ とにより容易に反射率を調整可能である.レーザー 出射側のDBRの反射率を低く(すなわち,透過率 を高く)することで,レーザー光の取り出し効率を 向上させることができる.しかし同時に,しきい値 電流が増大してしまうというトレードオフの関係が あるため,デバイスの動作点を考慮した上で,最適 な反射率を選択することが重要である. Fig. 8に,ペア数を減ずることによる共振器構造 の最適化を施したVCSELアレイの出力特性を示す. Fig. 8より,発振しきい値電流は反射率を低下させ ているのにも関わらず最適化前後ともに80 A程度と 大きく変わらず,スロープ効率(dP/dI)が向上し ていることが分かる.これは,改善した活性層がこ れまで用いていた活性層よりも高利得であるためで ある. 以上のように,新規活性層の開発と共振器構造の 最適化により,VCSELの外部量子効率の向上を実 現した.
Fig. 7 Reflection index to p-DBR pairs.
Fig. 8 Comparison of IL characteristics before and after improvement about cavity structure.
2-2 放熱性の改善 VCSELアレイから数百Wの出力を取り出すため には,注入する電流値も数百Aレベルの大電流が必 要となり,ジュール熱による発熱の影響も大きなも のとなる.一般にレーザーデバイスは温度によって 出力が制限されてしまうため,発生した熱を如何に デバイスから取り除くかは高出力化における重要課 題である. 我々が開発したVCSELモジュールの構成をFig. 9 に示す.VCSELアレイは発光領域φ 8.9 mm,チップ サイズ約10 mm□であり,VCSELチップの裏面側に は絶縁性の放熱基板で出来たヒートシンク,ペル チェ素子,放熱用フィン,ファン,がこれらの順で 配置されている.これらの冷却機構を有効に作用さ 0.00 0.50 1.00 1.50 2.00 750 800 850 PL intens ity [a .u. ] wavelength [nm]
Conventional active layer new active layer
0 50 100 150 200 250 300 350 400 0 100 200 300 400 500 Li ght Po we r P [W] Current I [A] Conventional number of DBR pairs Small number of DBR pairs Φ8.9mm Emission Area 17℃ 500μs,20Hz QCW
せるためには,良好な部材間の接合が必要となる. その中でも最も重要なのは,VCSELアレイとヒー トシンクとの接合である.高い放熱性を得るには, 接合部に空隙や酸化膜が生じにくいように金属系の はんだ接合を用いるのが望ましい.はんだ接合にお いては,接合時にAu原子が必要以上にはんだ材料 へ拡散し,共晶化されずに剥がれてしまうという不 具合が起こりうる.また,高出力VCSELではチッ プサイズが大きくなるため,大面積で均一に接合す るプロセスが求められる.そこで我々は,接合材や ヒートシンクの材料の選定に加え,接合時の昇温お よび降温プロファイルの最適化と,デバイスに均一 に荷重を掛けられる冶具の設計を行った.
Fig. 9 Construction of our VCSEL module.
2-3 ファイバーカップリング効率 フ ァ イ バ ー 結 合 型 の モ ジ ュ ー ル に お い て は , VCSELアレイから出射されたレーザー光を有効に 利用するために,ファイバーへのカップリング効率 を考慮した設計が必要である. VCSELはモノリシック2次元アレイの作製が容易 であることから,Fig. 9にも示したように一般的な 端面レーザーと比較して光学系を単純にすることが できる.しかし,一方で,高出力化にはある程度大 きなVCSELアレイの面積が必要となるため,ファ イバー入射面における収束ビームスポット径は大き くなりやすい傾向がある.従って,VCSELアレイ から出射されるレーザー光を有効に利用するために は,一般的なファイバー(コア径φ 0.6~0.9 mm) よりも大コア径のファイバーを用いるのが望ましい. そこで,ファイバーの仕様はコア径がφ 1.5 mm,お よびNAが0.39とした. VCSELアレイの設計について考えると,VCSEL アレイの発光領域径を大きくすることでアレイを高 出力化することができるが,ファイバー入射面への ビーム収束は困難になる.また,高出力化のために はアレイを構成する単素子の発光面積も大きいこと が望ましいが,この場合も同様にアレイ全体の収束 ビームスポット径を大きくする要因となる.このよ うに,一般にアレイの高出力化とカップリング効率 との間にはトレードオフの関係がある.そこで,こ れらをパラメータとした光学シミュレーションおよ び実験的なVCSELアレイ評価を行い,アレイ出力 およびカップリング効率のバランスが最適となるよ うな光学設計を行った.その結果として,VCSEL の発光領域径をφ 8.9 mmと定めた. また,MLAとVCSELとの実装には高い位置精度 が要求される.この実装方式としては,VCSELデ バイスを発光させながらMLAの位置を調整し,最 適となる位置で紫外線硬化樹脂を用いてVCSELに 接着させるアクティブアライメントの方式が考えら れる.我々は,このアクティブアライメントにおけ るMLA実装装置の設計および製作を行い,数μm以 下という非常に位置精度の高いMLA実装工程を立 ち上げることができた.これにより,高いカップリ ング効率を有するVCSELモジュールが安定して得 られるプロセスを実現した.
3.
結果
製作したVCSELモジュールの外観写真をFig. 10に 示す.Fig. 10 (a)はファイバーと冷却機構を取り付 けたもの,Fig. 10 (b)はVCSELモジュールのみを示 している.
Fig. 10 The view of our VCSEL module: (a) with an optical fiber and cooling system, (b) only VCSEL module. 製 作 し たVCSELモジュールは冷却機構(ペル チェ素子,放熱フィン,ファン)を含めても100 mm × 100 mm程度の大きさである.従来の同程度の出力 の端面発光型レーザーモジュールと比較して,体積 で約1/5~1/8程度の大きさを実現した. このモジュールの入出力特性をFig. 11に示す.測 定は電子冷却機構を用いてVCSELチップ裏面の温 度を17℃に制御し,パルス幅500 μs,繰り返し20 Hz の駆動条件下で行った.冷却機構を付けた状態であ れば,40℃までの環境温度下において同様の特性を 実現できることを確認している.20 Hzの繰り返し は,コージェネレーション用ガスエンジンの回転数 に十分対応できる値である. Fig. 11より,アレイ出力で311 W,ファイバーア ウト出力で204 Wの最大出力を確認することができ た . こ の 出 力 は フ ァ イ バ ー 結 合 型 のVCSEL モ ジュールとしてこれまで報告されている最大の出力 110 Wを大きく上回り,目標の200 Wをクリアした. 電流注入が大きくなることに伴い,各VCSEL素子 から出射されるレーザー光の放射角が広がることに 由来するカップリング効率の低下が見られているが, 最大出力時でも65%以上のカップリング効率を確認 した.
Fig. 11 I-L characteristics and coupling efficiency of VCSEL module. 次に,モジュールの波長特性について説明する. Fig. 12にVCSEL裏面温度17℃時における波長スペク トルを示す.本モジュールでは,半値全幅で1.7 nm と細いスペクトル幅が得られていることが分かる. Fig. 13に本モジュールと,市販の端面レーザーモ ジュールとのピーク波長の温度依存性を示す.我々 のVCSELモジュールは温度に対して非常に安定し た温度特性を持っていることが分かる.波長の温度 安定度は約0.05 nm/Kであり,これまでに報告され ている文献と同等の値を示した5).
Fig. 12 Lasing spectrum of our VCSEL module.
Fig. 13 Temperature dependence of peak wavelength.
最後に,本VCSELモジュールを励起光源として 固体レーザー結晶(Nd:YAG/Cr:YAG)を励起した 際の受動Qスイッチ発振特性について説明する. Fig. 14 (a)にYAGの励起実験光学系,Fig. 14 (b)にQス イッチレーザーの評価結果を示す.Fig. 14 (b)より, 500 μsの励起時間において,2.5 mJ × 4パルスのQス イッチ出力を確認することができた.すなわち, レーザー点火において実用上必要とされるレーザー エネルギーを得ることができた.
Fig. 14 Q-switch experiment pumped by our VCSEL module: (a) experimental setup, (b) Q-switch laser characteristics.
4.
まとめ
VCSELの高出力化開発とモジュール化開発を行 い,レーザー点火用の励起光源として実用的な 808 nm帯の高出力VCSELモジュールを開発した. 製作したVCSELモジュールは,冷却機構を含め ても100 mm × 100 mm程度の非常にコンパクトな大 きさで,40℃までの環境温度で安定して動作するこ とができる.パルス幅500 μs,繰り返し20 Hzの駆動 条件においてアレイ出力311 W,ファイバーアウト 出力204 Wを確認することができた.この出力は, ファイバー結合方式のVCSELモジュールとしては これまでに報告されている中で最大の出力である. このVCSELモジュールを用いてNd:YAG/Cr:YAGの 固体レーザー結晶を励起することにより,エンジン 運転に必要なQスイッチ動作出力である2.5 mJ × 4 パルスを得ることができた.謝辞 _____________________________________ 本活動にあたり,開発助成金の援助を頂きました NEDO (New Energy and Industrial Technology Development Organization) に謝辞申し上げます.
また,本研究においてVCSELの接合技術等に関 してご協力とご助言を賜りました分子科学研究所 平等研究室に謝辞申し上げます10,11).
参考文献 _________________________________ 1) R. Hickling, W. Smith: Combustion Bomb Tests of Laser Ignition, SAE Technical Paper 740114, doi:10.4271/740114 (1974).
2) H. Sakai, H. Kan, T. Taira: >1 MW Peak Power Single-Mode High-Brightness Passively Q-Switched Nd3+:YAG Microchip Laser, Opt. Express, vol. 16,
pp. 19891–19899 (2008).
3) M. Tsunekane et al.: High Peak Power, Passively Q-Switched Microlaser for Ignition of Engines, IEEE J.
Quantum Electron, vol. 46, pp. 277–284 (2010).
4) 軸谷直人ほか: プリンタ用780nm帯40ch光書き 込みVCSELアレイの開発, Ricoh Technical Report, No. 37, pp. 74-80 (2011).
5) M. Tsunekane, T. Taira: Ignition lasers operating for wide temperature range, Laser Ignition Conference’13, LIC2-3 (2013).
6) J. Schwarz et al.: Pumping concepts for laser spark plugs – Requirements, options, solutions, Laser Ignition Conference’14, LIC3-3 (2014).
7) 常包正樹, 平等拓範: レーザー点火のための実 用的な固体レーザー, レーザー研究, 第42巻, 第5号, pp. 394-399 (2014).
8) M. Tsunekane et al: Micro-Solid-State Laser for Ignition of Automobile Engines, INTECH Open Access Publisher, http://www.intechopen.com/books/ advances-in-solid-state-lasers-development-and- applications/micro-solid-state-laser-for-ignition-of-automobile-engines (2010). 9) 常包正樹, 平等拓範: 動作温度領域の拡大を目 指 し た エ ン ジ ン 点 火 用VCSEL励 起マ イ ク ロ レーザー(2), レーザー学会学術講演会 第33回 年次大会, B328pIX09 (2013).
10) M. Tsunekane, T. Taira: 300W continuous-wave operation of a diode edge-pumped, hybrid composite Yb:YAG microchip laser, Optics Lett., vol. 31, pp. 2003-2005 (2006).
11) M. Tsunekane, T. Taira: Design and Performance of Compact Heatsink for High-Power Diode Edge-Pumped, Microchip Lasers, IEEE J.Sel. Topics